西垣林太郎のピンポンカラーなブログ
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12:55 07月02日   [土]
ギターの弦の選択について(その1:1弦)

ギター雑誌などを見ていると、色々な人の使用楽器や弦についての情報がのっていることがあります。楽器も例え同じ製作家でもそれぞれ個性が異なり、そうありがたい情報では無いようにも思えます。さらには、使用楽器の本当の正体が分からない(せいぜい製作家と製作年と材質しか分かっていない)状態での弦の情報にどれほどの意味があるのか不思議です。

弦の話といっても、どのメーカーの何がどうという話ではなく、どんなことを考えて弦を選んでいるのか、という話を中心に書いてみます。ただ、各弦メーカーは製品の細かい仕様について語りたがらないので中々一般化も難しく、そもそも自前で作っているのか、化学会社、繊維会社に外注しているのかさえ分からないことがあります。

ギターの弦は大雑把に4つのカテゴリーに分かれます。
・ナイロン(比重が小さい)
・フロロカーボン(比重が大きい)
・ナイルガット(プラスチック系の樹脂?比重はガットに近い)
・ガット(羊などの腸)

ギターの歴史を振り替えると、バロックギターや19世紀ギターの時代はガット弦、もしくは低音用にガットを芯に金属を巻いた弦が主流でした。弦は線密度が大きくなれば同じ張力・弦長で低い音がでます。低い音を出すためには弦を太くするか、比重の大きい素材を使うことになります。金属の巻弦も比重を大きくする工夫です。

まずは一番音が高い1弦の選択について説明してみます。

モダンギターの時代になって、合成繊維の弦、特に最初はナイロンですが、が同時に使われ始めたかというと、そうではありません。化学でも習った通り、6,6-ナイロンの合成は1935年のことです。モダンギターも当初はガットだったのです。こ20世紀初頭のガット弦の時代は平均的にはやや低い目のピッチ425Hz~435Hzで弦長は今と同じ650mmかそれより1〜2cmくらい短いものが多かったです。そうすると現在の440Hz〜445Hzと比べて、もし同じ張力なら太い弦を用いることになります。また、同じ張力・周波数で、弦長が例えば1%短くなるとき、弦の太さは約1%(正確な計算値は1.01...%だが)太くなります。

現在の650mmのギター(660mmのも増えている)にガット弦、ナイルガット弦、フロロカーボン弦を張ると、1弦が異常振動を起こし、ディストーションがかかったような音や、金属的な音や、薄っぺらい音、他よりも弱々しい音になってしまう経験をされた方は多いと思います。自分の楽器ではそのようなことは無かったという場合は、よほど良くできた楽器であるか、もともとの楽器の音色やあるいは演奏テクニックに同じ音色の傾向があって目立たず気付いていないかのどちらかだと思います。このことは、弦が細すぎることによって起こっているので、張力が上がり過ぎてしまうことを覚悟で太い弦を1弦に張ることで少し回避することも可能ですが、その代わりに楽器や手に負担がかかることになります。多くのセットで売られている弦は1弦は張力が他よりも高くなるように仕組まれています。その理由について、1弦はメロディーを弾くから目立つように、などの説明も見かけますが、最も大きい理由は振動の特性がある程度一致するように、同じ張力なら細くなり過ぎてしまう1弦を張力を上げてでも太くし、逆に3弦は張力を下げてでも細くする工夫と思います。同じ様な工夫はおそらくはガット弦の時代からされていた可能性は高いです。

これが、もし20世紀初頭の低い目のピッチで、場合によっては弦長も短い目であるなら、同じ張力でも太い目の弦を1弦に使えていたので、弦が細すぎることによって生じる振動の特異性は少なくなります。

一方、比重の小さいナイロン弦は同じ張力・周波数で太い弦を使うことになるので、1弦が細くなり過ぎず、張力も上がり過ぎず、ある意味650mm以上、440Hz以上の時代に適した素材と言って良いように思います。ナイロンが発明されてからのナイロン弦の急速な普及には、扱いが簡単なこと、コスパが良いことなど色々な理由が考えられますが、見落とされやすい理由にピッチが上がっていくにつれ、ガット弦の1弦が切れやすさの点だけではなく、音色の点でも不利になったことを考えなければいけません。仮にガット弦が大好きな人が歴史を変えたいと思って、20世紀半ばにタイムトリップするとしたら、ギター製作家に630mm以下の楽器を作ってもらうようにするか、ギターの調弦を従来の1弦=Miではなく、Reなど低い調弦に変えるか、そういった工夫が必要と思います。

個人的には1弦の選択が単独の性質としても、他の弦とのバランスも含めて最も難しいです。例えば19世紀ギター(630mm)で392Hz〜410Hzならナイルガットやガットを使うことが多いですが、415Hz以上ですとナイロン(ハナバッハの黄や、セシリアのS-LowやLow)を使うことが多いです。モダンギター(640mm〜650mm)はハナバッハの黄や、セシリアのS-LowやLow、ハナバッハのフラメンコの黄などを使っています。最近、セシリアのS-Lowが手に入り難いので、ディアマンテ辺りを本格的に使っていこうかとも考えています。細かい銘柄について、張力のグレードなどは楽器との相性や、他の弦とのバランスもあります。詳しくは2弦以降のところで説明したいと思いますが、2弦との統一性も勿論大事ですが、倍音を拾って響きを足す役割も果たす低音弦とのバランスも大事です。

追記:ディアマンテ(Diamante)のExtra softを入手したので使ってみました。セシリアと少し似ていますが、張力はより低く、落ち着いた上品な響きでした。しばらくこれを使っていことうと思っています。

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