西垣林太郎のピンポンカラーなブログ
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13:04 11月02日   [木]
Rob MacKillop考

人気ユーチューバー(?)のRob MacKillop氏が「歴史的」ではないとされているリュートを用いて、(恐らく)そのメーカーとのタイアップでリュート曲を演奏した動画をアップロードしたことが一部で批判されています。「間口」を拡げるべきか、「正道」を行くべきかの議論は絶えず存在するので、今更は特別な興味はないのですが、マキロップ氏にの活動方針についての誤解も生まれているので少し書いてみます。

マキロップ氏が道を踏み外したかのような言説は明らかに誤りで、彼は最初から「間口」を拡げてより多くの人が、特に彼の専門のフランスやスコットランドのリュート音楽にアプローチすることを念頭に活動を続けてきています。例えば上の動画のようなスコッランドの主に17世紀のリュート曲などを、さほど調弦に必然性のないOpen Dチューニング(クラシックギターではほとんど使われず、ケルト系やカントリー系などの音楽でしばしば使われる)にアレンジして楽譜を多く出版しているのは、クラシックギター奏者だけでなく、アイリッシュ、ケルト系の奏者にもこういったレパートリーを開拓して欲しいということでしょう。もちろんクラシックギターでも同様のレパートリーを演奏しています。

少し前に、19世紀ギターのパノルモのコピーを持ってギターを習いたいという方が来られて、話を伺うとマキロップ氏のyoutubeを見て、その19世紀ギターの音色と特にスコットランドのリュート音楽に感銘を受けて、是非演奏したいとのこと。19世紀のレパートリーも好きなので、楽器の演奏方法の習得は19世紀の教本でするのも良いかも、という方向で話がまとまってお手伝いすることになりました。非常に熱心な方です。

マキロップ氏が多く出版しているOpen Dの調弦で弾くとなると19世紀の教本は使い難いので私も頭を悩まして、スコットランドのリュート手稿譜を一通り目を通しました。スタンダードなリュート調弦のものと、若干のマンドラ譜(調弦は主に2種類)と若干のバロックギター曲があることが分かり、Open Dを使う必然性は感じませんでした。これは一般的にこのレパートリーに関してのOpen Dの使用に否定的な意味ではなく、19世紀ギターを使って、19世紀のレパートリーとスコットランドのリュート曲の両方を弾きたいという彼のニーズに関しての話です。いずれにしても、いくつかの文献にも触れられていたり、あるいは同じ曲が異なる楽器のタブラチュアで残されていることなどから、この辺りの音楽時代がさほど調弦に依存していないということは言えると思います。生徒さんと相談の結果、標準調弦で19世紀の教本やそれ以前の曲を色々として、リュートタブラチュアを将来的に弾くときには3弦を半音下げてリュート調弦と同じ形にする方向になりました。リュート自体にも将来的に興味があるということなので、この形が最善のように思えます。

と話が長くなってしまったのですが、マキロップ氏の活動、特にその間口を拡げる方向は大きな成果を上げているように思います。その一方でマキロップ氏は正道、正攻法のアプローチも多く発信しています。このような方の活動が正しく評価されることを望みます。

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